熊野川サツキマスと(倉本啓二)

サツキマス

サツキマス――。アマゴの降海型であるこの魚を私の住む和歌山県新宮市周辺ではノボリと言います。

1980年代の後半、私が中学生の時に、そのノボリの存在を知りました。

「熊野川に50cm近い鮭のような魚がいる」と、父親から教えてもらいました。

もちろん、当時は今のようにタックルがターゲットによって細分化されていることもなく、バスロッドに適当なスピニングリール。ナイロン3号にスプーンを直結し、幸い実家の目の前がポイントになるであろうと思われる瀬や淵が多数ある場所だったので通い続けましたが、まったく姿を見ることができず、その存在に疑念を抱きながらも私の中で憧れの魚になっていきました。

それから通い続けて2年目。

下流域の大岩が点在するポイントでいつものようにスプーンを投げていると、岩陰から急に魚が出てきてスプーンにヒットしました。

あまりの興奮と緊張感で、頭が真っ白になり、その後のやり取りは、ほぼ覚えてないものの、30cmくらいの銀化シラメが釣れてくれました。

当時の私は、すでに渓流のアマゴ釣りにはどっぷりとはまっていたので、銀化した独特のフォルムに少し不思議な気持ちになったのを今でも覚えております。

それから今に至りますが、毎年サツキマスを追い続け、経験を重ねることで見えてくるものも増えました。しかし、どれほど経験を重ねてもまだまだ思い通りにいかないゲーム性に魅了され続けております。

瀬の中でルアーの周りでギラっと光線が走って、少し遅れてやってくる手元への衝撃。

合わせを入れた時に根掛かりと思ってしまうほどの重量感。

何年たっても、何度経験しても、そして何匹釣っても、サツキマスがヒットした瞬間は毎回新鮮で今だに興奮が抑えられずにいます。

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