皆さまこんにちは、Web担当ひろです。さて、私の住む和歌山県では早い河川では3月1日に解禁となり、いよいよ待ちに待った2023年渓流シーズンを迎えます。
その直前の2月9日、北海道大学から非常に興味深い論文のプレスリリースが出されました(こちら)。
ざっくり言えば、「放流してもその魚は増えないどころか、長期的にみると、放流した種類の魚だけでなく、それ以外の生物にも悪影響をもたらす」というものでした。
なかなか衝撃的なテーマですが、和歌山県の現状とともに見ていきたいと思います。
研究者の間では常識だった
昔は放流することで魚を増やすという考え方が一般的だったようですが、近年、生態学の研究者の間では「放流は増殖には結びつかない」というのは常識だったようです。
そのことが今回の論文で一般にも広く知れ渡ることになり、釣り人の私も「やっぱりそうやったんか…」と、少なからず動揺しています。
放流しても増えない理由としては、これもざっくりというと、放流された魚たちの餌の取り合いや隠れ場所の奪い合いなどの競争が激化が挙げられます。さらに放流とは関係のない他の魚でも同じようなことが起こったというのです。
まぁ、人間に例えても普通に暮らしている人たちのところに、ありえないくらいの大量の移住者が来たら、食べ物や住むところがなくなり、治安も悪化するのは想像できるというものです。
したがって、放流数が多ければ多いほど、その河川では生き残れる魚の種類も数も低下する傾向にあるとのことです。
放流しなくてもいいのでは?
「だったら放流しなかったらええやん」
というのは簡単ですが、まず、前にもブログで書きましたが、多くの内水面漁協には「第五種共同漁業権」による「増殖義務」があり、魚を増やさないといけません。
例えば、私の住む和歌山県では、令和5年度のアマゴの増殖目標は、日高川漁協で8万尾、日置川漁協で4万尾、その他では2万尾や1万尾とされています。
放流ナシでこれだけの目標を達成させるのは、私のような素人からするとかなり無理があると思えます。
また、釣り人目線からすると、「あの川は放流量が多いから、あそこにいっぱい釣りに行こう」と思う人も少なからずいるでしょう。
放流量=集客効果につながる可能性は大いにあり、釣り人がたくさん来て、遊漁料をより多く払ってもらい、その収入で漁協の経営が安定し、放流義務を果たしていく、、というサイクルが生まれます。
しかし実際は、それを繰り返すうちに長期的にはその川の魚自体が減っていく。要するに、言い方は悪いですが「自転車操業」に陥っているといえます。
当然、今すぐ放流をやめるということは難しいことですが、「持続可能な経営」を続けるため、今後、行政や漁協は大きな転換期を迎えることになるでしょう。
県の担当課に聞いてみた
…というわけで、和歌山県の担当課の方に電凸してみました。

北大の論文をみて驚いてます。県内の渓流魚の放流事業の現状を教えてください。

現在は、渓流魚については稚魚放流、成魚放流が主になっていますが、発眼卵放流や、親魚放流も行われているようです。しかし県としては在来種を脅かさないよう、堰や滝の上流など、過去に放流したことがない場所には放流しないよう、各漁協さんには依頼し、漁協さんもそうされているようです。

なるほど。漁協さんも放流によって生態系が乱れることを懸念しているのですね。放流によって増殖が果たせないとなれば、経営にもかかわる難しい問題だと思います。今後はどのようにお考えでしょうか?

何年度までにどうするかという目標を決めるまでにはいたってませんが、増殖義務については、放流以外にも産卵場の造成なども含めていくということも考えています。
とのことで、少し安心しました。
末永く渓流釣りができる未来に
今回も、解禁直前にちょっとなんやねんという記事になってしまいましたが、渓流釣りにはこうした事情があるということも知っていた方がいいと思って書きました。
私は、渓流釣りをたしなむアングラーさんは、他のジャンルに比べて、魚(特に在来種)を守りたいという意識が高いと思っていますし、各漁協さんもそう思っています(県外では山梨県の日川、北海道の朱太川など、放流に頼らずに漁場を維持する先進的な地域もあると聞きました)。
うまく自然と共存し、漁協さんも経営が安定し、われわれアングラーも末永く渓流釣りが楽しめる、そんな未来になればいいですね。
ややこしい話ばかり書いてすみません。次回ブログからはちゃんと、MANOMAのアイテムを使った釣行記になると思います(笑)
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